- 九州大学大学院 筑紫キャンパス
- 大学院総合理工学府総合理工学専攻デバイス理工学メジャー
坂口・森野研究室
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数学・物理学・情報学を活用して新しい複合的研究分野の開拓を目指しています
1.研究室で行っている研究内容と関連分野の概略
非線形な問題に対して物理学・数学・情報学的知見を活用して様々な理論的研究を領域横断的に行っています(図1)。カオス・フラクタルなどの非線形科学や多数の要素が強く相互作用する複雑系に関しては数値シミュレーションなどを活用した理論的研究を行っています。また、結合振動子系や複雑ネットワークの解析・機械学習アルゴリズム開発などを通して、電力網などを含む非線形動的システムの障害に対する頑健性解析、非線形動力学に基づく機械学習・脳模倣型AIに関する解析(図2)、実データを予測分類する数理情報学的なデータサイエンス研究等も行っています。その他にもボーズ凝縮体がつくる渦ソリトンの解析や、粘菌と呼ばれるアメーバ様単細胞生物の集合過程に現れるスパイラルパターン(図3)の解析等を行ってきました。より詳しくは研究室ウェブサイトや所属教員の研究概略紹介ページを参照ください.
2.複合的分野を研究することの魅力
当研究室では理論的研究を行っていることから広い範囲でのテーマ設定が可能となりますが,特に当研究室が扱う分野の魅力として,まず「広い普遍性」があることが挙げられます.例えば物理学では現象に応じてミクロからマクロまで様々なスケールが存在して,対応する様々な「〇〇物理」が存在ます.仮に,原理も振る舞いも異なるこれらの現象が広く同等の(もしくはよく似た)数学の方程式で記述できるとすると,数式から得られる知見(解やその特性など)は広い現象へと適用可能となります.この普遍性は物理学に閉じるものではなく,その他の分野における現象が同様の数学的特性を持っているならば知見が活用可能と言えます.この様な数理工学(数理モデリング)が持つ特性により様々な新しい分野へと飛び込んでいくことが比較的容易になり,ある問題で得られた知見を別の問題へと広く活用できる普遍性が魅力の一つと言えます.図4における「研究スタイル1」に該当します.
一方で,一つの問題の基礎的な理解をじっくり深めていく研究も可能です.複合的分野の研究は各領域での深い基礎的理解を下地にして進めていきます.数理の深い基礎的理解を探求することも本研究室の研究目的の一つです.図4における「研究スタイル2」に該当します.
3.理論研究に適した研究環境設備・広い研究ネットワーク・好立地環境
当研究室が主な対象とする理論研究では,「手計算」と「数値計算」が重要な研究手法になります.これらの研究に必要な専門書籍・計算資源環境が当研究室には準備されています.研究室の設備に加えて,九大図書館の豊富な蔵書や九大のスーパーコンピューター等と必要に応じて強力な研究資源にアクセスすることが可能です.また,当研究室の研究棟は令和5年4月に大規模改修工事を終え,快適な研究環境が提供できる状態にあります.
上述した普遍性により研究室は様々な共同研究(応用研究の例としては,前立腺癌・緑内障・白血病・宇宙ロケットエンジン等)や多数の研究プロジェクト(合原ムーンショットプログラム等)に携わってきました.これらの共同研究に様々な形で関連することで多様な先端数理研究に携わる機会も得られますし,もちろん指導教員と相談してこれらとは異なる研究を進めていくこともできます.図5は過去・現在の共同研究先や議論ネットワークの一部を示しています.
また,筑紫キャンパスはJR大野城駅が最寄りであり,大野城駅から博多駅までは10分程度とアクセスも良く,更に福岡空港というアクセス良好な空港が近辺に存在することから国内外の交流が行いやすい環境にあります.
4.理論系研究室と高専生の隠れた高い親和性
ここまで見てきた様に当研究室は理論系の研究室となっています.しかし,理論研究とは実験知識・実践的技術と切り離されているものではありません.実験で得られた知見から要点を抜き出して体系的にまとめあげることも理論研究ですし,理論から導かれた複雑な数式を"実際に解く"ための数値計算技術・プログラミング技術などの実践的技術も非常に重要です.高専のカリキュラムでは具体的な問題を解決する手法を様々に身に着けてきたと思います.当研究室のテーマは理論研究の側面が強いことから,これまでに身に着けた知識・技術が役に立たなくなると感じる方もいるかと思いますがそれは異なります.本研究室の研究分野に関する知識を新しく学ぶ必要があるのは事実ですが,実際の研究活動を通して重要となるのは問題を深く考察する過程であり,その際の問題の切り口や解決策の発想はその人の経験に大きく依存します.この様に各人が高専で培ってきた各人で異なる知識・技術を基盤として,当研究室で理論的問題に取り組むことで相乗的な効果を生み,独創的な結果や新しい技術の種につながるであろうと考えています.図6はそのイメージとなっています.
色々な研究背景を持つ人が一か所に集まることで多様な研究が創発されます.本研究室では基礎理論に興味を持ってその研究を深めたい人・研究室の理論と自らの具体的な技術を組み合わせて新しい発展を見出したい人など様々な人材を募集しています.本研究室に興味を持たれた方は研究室ウェブサイト・教員個人ウェブサイト・定期的に開かれている入試説明会(総合理工学府ウェブサイト参照)・オープンキャンパス(例年5月)などを訪れてみてください.リンクは本ページの右側にあります.